2012年2月29日水曜日

ゲルマンから見る世界



まだ20歳代だった僕が、最初に当社のニューヨークオフィスを訪れた日、当時の社長から「メトロポリタン美術館も良いけど、まずエリス島の移民博物館を見なさい」と言われました。当時アメリカの文化や歴史などに興味はありませんでしたし、「エロス島って怪しくない?」なんて茶化していましたが、行っておいて良かったと今思います。かつてアメリカへ移住を希望する移民管理局があった場所が博物館になっており、ネイティブアメリカン(いわゆるインディアン)の分布から、現在のアメリカの人口分布までが歴史と共に語られています。自由の女神のあるリバティ・アイランドの隣の島で、決して遠くはないのですが、普段行こうと思わない場所です。いろいろ勉強になりました。特に良く覚えているのは、アメリカにおけるドイツ人の人口・分布です。当時は「アメリカ人と言うのはイギリス人の子孫」程度に考えていたので、アメリカ人の祖先ではドイツ系人口がもっとも多いと知って、驚いたものです。
2006年の国勢調査では5000万人以上のアメリカ人がドイツ人オリジンだと申告しており、ヨーロッパ系としては2番目のアイルランド系を大きく引き離しています。フーヴァー、アイゼンハワーやニクソンといった大統領も生み出しています。第二次世界大戦でアメリカが参戦に躊躇した大きな理由が、軍の上層部にドイツ人将校がたくさんいたため士気が上がらないことだった、と言われています。(でも始めたら大活躍だったそうですが)「それは知らなかった、けど、それが?」と思われるかも知れません。でも、この事が今のビジネスの世界に大きく影響しているのではないか、と大塚は感じています。
「グローバル化」が叫ばれる中、日本企業としては遅々と進んでいない、と感じられている方が多いのではないでしょうか?特に昨今の欧米系企業の連携ぶりを見ると日本系企業は取り残されているのではないかと思ってしまいます。化学業界では、昔ドイツのヘキスト社とアメリカのセラニーズ社が一緒になっていました。最近ではドイツのBASFがアメリカのEngelhard社を買収して話題になりました。車業界ではベンツとクライスラー、GMとドイツのオペルという協力関係がありました。先日オペルの救済にドイツに来たGMCEOMr. Fritzと典型的ドイツ人の名前で、祖国の救済に来たのか、などと話に出ていました。アパレル業界でもドイツのアディダスがアメリカのリーボックを買ったと聞いてびっくりしました。リーボックって李さんと朴さんが作った韓国企業だと思っていたからです。(ウソです)ともあれアメリカ企業とドイツ企業の連携は、双方とも大国ということもあって話題性が高いのですが、アメリカにそれほど多くのドイツ人子孫がおれば話し易いのも当然だと思われませんか?考えて見て下さい。アメリカに5000万人の日本人子孫が住んでいてビジネスの中枢部を占めている姿を。言葉の問題はあるにしても、ものすごく親密感を持って、協力関係を築けると思いませんか?こう考えると、ドイツ企業がアメリカの企業と手を組んでビジネスを展開しているから、日本企業も同じようにと言う訳にはいかないと思います。
ドイツ人のアメリカとのかかわりを調べているとおもしろい事に気付きました。アメリカにおけるドイツ人の分布です。分布図(略)を見ると、ドイツ人密度の多い地域は、田舎ばっかりです。後から入って来たからハンディキャップはあったのでしょうが、やっぱり都会嫌いのドイツ人気質がここに出ているのだろうと思います。昔アメリカに住んでいた時、なんでアメリカ人って地方に行くほど体が大きくなるのだろうか?と思っていましたが、何となく解決です。 

では、ドイツ人の定義は?となると、これが厄介なのです。日本人だと、日本で生まれて日本の国籍を持っている人といえば、99%が相当するのではないでしょうか? 同様の定義をドイツ人に当てはめようとすれば、スイス系ドイツ人、オーストリア系ドイツ人と言う方々も居て、必ずしも当てはまりません。(ドイツ系スイス人とかの反対表記もあります)ゲルマンを英語にしたジャーマン(German)は、あきらかにイギリスがその定義をあきらめて「ゲルマン人の国なんだから、ジャーマンでいいじゃん!」と決めたものです。でも、ゲルマン人といえば、ますますややこしくなりま す。Wikiによると、現代においては、ドイツオーストリアスイスルクセンブルクオランダスウェーデンノルウェーデンマーク等に住む人々、イングランドアングロ・サクソン人
ベルギーフランデレン人、フランスアルザス人がこの集団の系譜を引いている」とあります。アメリカに居る子孫も合わせると、ゲルマン人の人口は、世界中で非常に大きい事がわかります。
ルール重視のゲルマン人気質はこのあたりに強く残っています。決してドイツ一国の話ではありません。厄介で厳しい法律をたくさん作りやがって!とお怒りの方も多いでしょうが、彼らがラテン系のようにええ加減なら、またそれはそれで腹が立つでしょう。海外に居ると「自分とは違う考え方と、そういう考え方をする人々を尊重する」事の大切さを感じます。
長い冬の終わりを告げるドイツのカーニバルです。春の足音が聞こえます。

2012年2月20日月曜日

グレーター・東京




グレーター東京って言葉を聞いたことがありますか? プロレスラーではありません。東京圏って感じのくくり方です。町の名前の前に“グレーター”と付けられているのに最初気づいたのはロサンジェルスに出張で行った時です。レンタカーの中の地図のタイトルに “Greater Los Angeles”と書いてあって、何だこれは?と思った記憶があります。その後 Londonも単に“London”と言えばシティと呼ばれる小さい地域と混同されるためか、周辺の地域を含めた行政区を Greater Londonと呼ばれていることを知りました。“Greater”とはもちろん Greatの比較級ですが、単に“大きな”という意味で使われることもあります。身近な例で言うと Greater Flamingoは“大フラミンゴ”です。(余計わからんか?)グレーター東京というのは、東京への通勤・通学圏に代表される経済圏のことです。このまとめ方にはいくつかあるそうですが、 2007年に UNが発表している人口は 3,600万人。圧倒的に世界一の人口です。

小学校の社会の時間に「メキシコシティの人口が東京を抜いて一番になりました」と聞き(記憶はあやふや・・)「負けたー」と感じた覚えがあります。それ以来「東京って世界的に見ればそれほど大きくないんだ」と思っていましたので Greater Tokyoのコンセプトは新鮮でした。でも考えてみれば当然ですよね。人口なんて地域の設定でなんとでもなります。昔僕が住んでいた時の新潟市の人口は 50万人でしたが今は 80万人になっています。どう考えても人が増えたとは思えません。面積が広がっただけです。また New Yorkに住んでいた時、「東京より大都市の New Yorkが通勤時に東京ほど混まないのは優れた移動交通手段があるに違いない」と思い探してみましたが到底見当たらず合点が行かなかった経験があります。全て解決です。



ちなみに Greater Tokyoに次ぐのは New York圏(ここは Greaterといわず単に NY metropolitan areaというようです。良くわからん。)が 2,200万人。2,000万人クラスの町として他にメキシコシティ・ムンバイ・デリー。上海は 1,500万人、北京が 1,200万人だそうです。人口の多さより誇れるのは経済圏としての GDPです。最近の調査で 164兆円と発表されており、これも世界一です。

その様な観点からヨーロッパを見ると随分差があります。ヨーロッパ中で人口 1,000万人を超えるのは3経済圏しかありません。ロンドンを中心とした Greater London、パリを中心とするイル・ド・フランス(フランス島という意味・川に囲まれているため)それにデュッセルドルフ・ケルン等を持つライン・ルール地域です。そのうち鉱工業を主産業にした地域はこのライン・ルール地域です。日本の化学・鉄鋼等、素材関連企業がデュッセルドルフに固まっているのも理屈に合います。

日本人から見るとドイツの人口分布は不思議です。地方都市の固まりとしか思えません。100万人以上の都市は四つしかなくて数十万人都市がたくさん点在します。海外出張される方は日本直行便のあるフランクフルトが大都市と思われるかもしれませんが人口的にはデュッセルドルフと大差ありません。数万人クラスの町になると、あちらこちらにあってそれぞれが特徴的で楽しめます。

ここデュッセルドルフからメッセージの様なものを発信していきます。ビジネスに関連するトピックスを中心に、外から見た日本・日本人など何か発見があれば盛り込みます。適当ですし独断と偏見に満ちていますが、しばらくお付き合いいただければと思います。